今から遡る事10年前、ある女性が気を振り絞るように六水院の門を
叩きました。その当時、彼女は脳梗塞で半身不随となり、家事をする
こともままならずに離婚。
82歳の自らの母親、そして15歳の娘とともに、行き場を無くしてしまい、
本当に困り果てて六水院に駆け込んできたのが、私達との出会いのきっかけでした。
不安な表情を浮かべたご家族に、下管長は優しく微笑み、暖かく六水院に
迎え入れられました。すぐにアパートを用意し、食事や衣料品、家具などはもちろん、
まだ15歳だった娘さんが寂しくないようにと、教師全員それこそ家族同然に
接して参りました。
下管長は学費は気にしなくて良いからと高校進学を強く進めたのですが、
15歳の娘さんは強い責任感から、一家の大黒柱として、
六水院の教師として働く道を選びました。
そして、その15歳の女の子は、今や25歳の立派な大人の女性に
成長し、六水院の教師となって信者さまの幸せを一途に願いながら、
お母様の闘病生活を長きにわたって支えておりました。
しかしながら、人の天寿とは変えられるものではありません。
私達六水院の大切な仲間であり、家族でもある、お母様は、
平成28年5月2日未明、
愛する娘さんに看取られながら、眠るように永眠されました。
翌日、熊本地震の余波が止まない中、総勢17名の僧侶が熊本に集い、
本葬を行いました。ここに故人が生前にお世話になった皆様に、故人
のご逝去をご報告差し上げるとともに、
六水院教師一同、心からのご冥福をお祈り致します。
合 掌
ご出棺前に
「10年前のあの時、六水院を訪ねてきたあなたと、縁あって
過ごせた時間は私の大事な宝物、人生の最後までご一緒させて頂けた
ことに心から感謝します」
と下管長はゆっくりと優しく語りかけられました。
そしてその日の夜、下管長が夜空を見上げると、ひとつだけ輝く、
小さな星を見つけたとおっしゃいました。
それはまさに、彼女の心からの笑顔だったそうです。
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